村上春樹『ノルウェイの森』ゆかりの地をめぐる — 早稲田と京都北部の山
『ノルウェイの森』の実在の舞台をたどる。主人公が通うとほぼ確実視される東京の大学キャンパスから、直子が療養する施設へ向かう京都北部の山道まで。
『ノルウェイの森』(1987年)は、村上春樹の名を広く知らしめた作品です。海外の読者にとっては、村上作品との最初の出会いになることも少なくありません。舞台は1960年代末の東京。主人公・ワタナベトオルは学生生活を送りながら、対照的な二人の女性の間で揺れ動きます。リアリズムに基づく青春小説です。
村上作品らしい幻想的な要素は、この作品では控えめです。地理的な背景も、おおむね実在の場所に基づいています。作中では具体的な地名がぼかされている部分もあります。それでも、舞台そのものはしっかりと現実に根ざしています。
立ち寄り先1: 早稲田大学(東京)
小説の中で、ワタナベが通う大学名は明かされません。しかし作中で描かれるキャンパスの様子や、村上春樹自身の経歴から、早稲田大学であることはほぼ間違いないとされています。村上自身も、早稲田大学の出身です。
2010年に本作が映画化された際、早稲田大学はこのつながりを積極的に受け入れました。日本プレミア上映を大隈講堂で開催し、大隈庭園や坪内博士記念演劇博物館など、実際のキャンパスを撮影に開放しています。演劇博物館は、映画版の学生運動シーンの背景にも映り込んでいます。
- アクセス: 早稲田駅(東京メトロ東西線)、または高田馬場駅(JR山手線・西武新宿線)を利用します。どちらの駅からも、本キャンパスまで徒歩圏内です。
- 知っておきたいこと: キャンパスは日中、一般に開放されています。大隈講堂のすぐ裏にある大隈庭園は、最も気軽に立ち寄れる見どころで、入園無料です。ワタナベが暮らす寮そのものは架空の設定です。ただし作中の描写からは、椿山荘に近い目白台・関口エリアが連想されます。この一帯はかつて、蛍の名所として知られていました。作中に、ひそかに有名な「蛍」の場面があることを考えると、興味深い符合です。
立ち寄り先2: 京都北部、山へ向かう道
直子が療養するのは、「阿美寮」という人里離れた施設です。ワタナベは京都・三条からバスに乗り、賀茂川沿いを北へ進み、やがて山道へと入っていきます。施設そのものは、村上春樹による架空の設定です。ですが道のりの描写は具体的で、読者たちはその経路を実際にたどろうと試みてきました。有力とされる説の一つは、琵琶湖に近い滋賀県側の比良山地です。ここにはかつて、「比良園」という実在の療養所がありました。
ただし、これはあくまで有力な推測であり、確定した場所ではありません。確かなのは、出発点が京都であること、そして賀茂川沿いを北へ進むと、本当に人里離れた山岳地帯に入っていくことです。
- アクセス: 京都・三条を起点に、車または路線バスで賀茂川沿いを北上します。大原を過ぎると、風景は一気にのどかな山間部へと変わります。
- 知っておきたいこと: ここはピンポイントの目的地というより、風景そのものを楽しむドライブルートです。「阿美寮」を示す案内板のようなものはありません。特定の建物を探すのではなく、作中に描かれた山道・川・人里離れた雰囲気そのものを味わうつもりで訪れるとよいでしょう。
旅の実用メモ
- 訪問に適した時期: 早稲田のキャンパスは、一年を通じて訪れやすい場所です。京都の山道については、積雪の多い真冬は避けた方が無難です。
- 拠点にする街: 早稲田を訪れるなら東京都心、山道のドライブなら京都市内が拠点になります。
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